酒井 清美さん(石州和紙の原料:楮(こうぞ)の生産者)~楮植栽編~

品質の良い楮を製造者にお届けする

2021.03.29

 浜田市三隅町は古くから石州和紙の生産が盛んに行われてきました。石州和紙の特徴は【日本一丈夫な和紙】と称され、民芸品をはじめ様々な材料として使用されています。丈夫であることの秘密は、原料に楮(こうぞ)と呼ばれる落葉低木の樹皮を使われていることです。

 このたび取材する三隅町井野地区の酒井清美さんと奥様の由美子さんは、2008年から楮を栽培・収穫し、品質の良い太い楮を提供できるよう研究されています。今回は楮植栽編としてご紹介します。今後も引き続き密着していきますので乞うご期待‼

 


石州和紙・石州半紙について

 経済産業大臣により指定された「伝統的工芸品」は236品目(2021年1月現在)にのぼっています。これまで長い我が国の歴史の中で幾多の変遷を経て、生活に溶け込み育まれてきた「伝統的工芸品」は、現在に至るまで広く愛用されています。石州和紙はこの伝統的工芸品に平成元年4月11日に指定されました。

 また、ユネスコ無形文化遺産の保護に関する条約に基づく「人類の無形文化遺産の代表的な一覧表」に平成21年(2009年)、「石州半紙」が記載されました。その後、平成26年(2014年)には、「和紙:日本の手漉和紙技術」として『石州半紙』『本美濃紙』『細川紙』が記載されました。

    

(写真:石州和紙会館の展示コーナー)

 

 

 

楮(こうぞ)について

 楮は、石州和紙の原料の一つであり、石州和紙の材料:楮の皮になるまでには以下の工程を手作業により行われています。

1 刈り取った楮は、1mに均一に裁断します。(写真左)

2 樹皮を剥ぎやすくするため、大きなせいろで蒸します。

3 硬い木の木盤に乗せ、樫の棒で叩き、1本1本原木から黒皮を剥ぎ取ります。

4 剥ぎとった黒皮を半日ほど水に付け、一番外側の表皮は削り取ります。

5 材料となる皮は水の入った煮釜に入れ、ソーダ灰を入れ沸騰させます。

6 4の工程で削り取れなかった黒皮(塵)取りを行います。

7 硬い木の木盤に乗せ、樫の棒で叩き、繊維を砕きます。(写真右)

※この後にも手作業による工程を経て和紙が完成します

       

(写真左:石州和紙の原料となる楮 写真右:材料となる楮の皮)

 

 

 

酒井さんの楮栽培

‐楮を栽培したきっかけについて教えてください。

(酒井さん)ここ浜田市三隅町では、古くから和紙製造が盛んであり、最盛期には多くの家々で石州和紙が作られていました。時代とともに、担い手不足などの理由から今や和紙製造者(和紙工房)も4戸になり、その原料となる楮を生産する農家さんも減少しています。

 私が楮を作るきっかけとなったのは、2008年に三隅公民館(現三隅まちづくりセンター)で行われたチャレンジ教室という企画がきっかけです。その後公民館(現まちづくりセンター)の方から楮を植えてみないかと提案がありスタートしました。

  

(写真:雄大な自然に囲まれた楮畑)

 

 

‐楮の特徴を教えてください。

(酒井さん)楮は2~4mに成長する落葉低木で、石州和紙の原料には、楮の樹皮だけでなく甘皮ごと使用することが特徴であり、そのおかげで紙の繊維が長くなり破れにくくなるのです。日本一丈夫な和紙と呼ばれる所以です。

 

 

‐良い楮を育てるためにどんな工夫をされていますか。

(酒井さん)楮は苗木から育てて1年で収穫できるまで成長するのですが、1年目は苗木1本からわずか2本の楮しか出荷できません。2年目は刈り取り後の2本から4本が育ち、3年目は8本というように徐々に増えていきます。大体4年から5年くらいで20~25本くらいになります。そのため栽培を始めたばかりの農家さんは生産量が少ないので苦労されていますね。

 そこで何年か前から、1箇所に苗木を何本植えれば短期間で効率的に収穫できるか研究しました。5本、7本など植えてみましたが、お互いの根が密集したり養分が分散してしまうので、1本1本が細くなったり枯れてしまうことが分かりました。最終的には、1箇所に3本植えておけば、幹が太く良い楮が3年でも20本くらい収穫できることが分かりました。

  

(写真左:1年目の畑(苗木植栽) 写真右:3年目の畑(今年は20本くらい刈り取れる予定))

 

 

 

‐酒井さんはどれくらいの楮を出荷しているのですか。

(酒井さん)夏場の天候によっても左右されますが、年間約3t~4t出荷しています。1,200株くらい植えてあるので、1株からは平均で3㎏くらい収穫できる計算です。今までの最高は1株で12㎏収穫したこともありますよ。

  

(写真左:過去約5mの楮を育てた酒井さん 写真右:剥ぎ取った後の楮の芯は燃料に有効活用される)

 

 

‐楮の植栽のスケジュールを教えてください。

(酒井さん)この時期(3月)くらいには、苗を植えたり、施肥をします。また、新たに楮を育てる方には、楮植栽研究会をここで開催し、私が育てた苗木も提供しています。

  

 

  

(写真:令和3年3月18日に開催した楮植栽研究会)

 

(写真:楮植栽研究会に参加された皆さんで記念撮影)

 

 

 

‐楮を育てる際に困りごとはありますか。

(酒井さん)そうですね、一番の困りごとは夏場の大雨ですね。天候によっては収穫量が減ってしまうこともしばしばです。また、この場所は昭和63年に起きた水害で、裏山からがれきや石が流れ落ちており今でも所々に散乱して困っています。

 さらに、ここは野生の猪の住処にもなっており、楮の根っこや樹皮をかじられることも多々あります。そうしたことから、数年前にフェンスを張り対策を行いました。

  

 

 

‐お手伝いすることはありますか。

(酒井さん)5月くらいに、伸びてきた楮の脇から芽が出てくるので、一つ一つ摘む作業があります。脇芽摘みと言うのですが、丈夫な幹を作るために必要な作業です。たった5日で10㎝くらい伸びるので、春先から夏場は5日で1周のサイクルで毎日畑を回っています。また、11月~12月の収穫時期にも刈取った楮を運んだりする作業もあります。

 興味をお持ち頂いた方は、是非お手伝いをお願いします。

 

 

今後事務局から浜田応援団のお手伝い企画をご案内しますので楽しみにしてください。

 

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