酒井 清美さん(石州和紙の原料:楮(こうぞ)の生産者)~楮芽かき編~

愛情を注いで楮を育てる!!

2021.08.13

 浜田市三隅町では古くから石州和紙の生産が盛んに行われてきました。石州和紙の特徴は【日本一丈夫な和紙】と称され、民芸品をはじめ様々な材料として使用されています。丈夫であることの秘密は、原料に楮(こうぞ)と呼ばれる落葉低木の樹皮を使われていることです。

 このたび取材する三隅町井野地区の酒井清美さんは、2008年から楮を栽培・収獲し、品質の良い太い楮を提供できるよう研究されています。今回は楮芽かき編として取材しましたのでご紹介します。今後も引き続き密着していきますので乞うご期待‼

 


 

酒井さんの楮栽培

 6月に入って酒井さんから1本の電話がありました。「平野さん(筆者)、畑に来てみんさい、楮に芽が出たよ」酒井さんに案内してもらうと一面緑に覆われた楮畑が現れました。たった2ヶ月でこんなにも成長するとは…酒井さんのお話では7、8月になれば、たった10日で50センチ近く成長するようです。

 

 

‐前回お伺いしてから葉っぱも出てきましたね。植えたときは30センチだった枝も腰の高さまで伸びました。この時期からはどのような手入れをされるのですか?

(酒井さん)毎年6月に入ると「芽かき」を行います。太く丈夫な楮を作るためとても重要な作業です。

 芽かきをする理由の一つに、葉っぱの付け根に枝分かれした芽が生えてくるのですが、そのままにしておくと栄養分が分散してしまい、細く短い枝ばかりが増えて、良い原料が得られなくなります。もう一つの理由に、楮の刈り取り後の皮剥の際にも、芽の部分で皮がちぎれてしまうなど少量の皮しか取れなくなります。                  

  

 

 酒井さんはものの数秒で芽を摘んでいきますが、実際体験してみるとそう簡単にはいきません。

 今回は市の職員や今回浜田応援団から駆けつけてくれた遠藤さんにも挑戦してもらいました。見てのとおり中腰での作業にもなるのでひと苦労です。

  

 

 

‐芽かき作業のコツを教えていただけますか?

(酒井さん)右利きの方であれば左手でしっかり枝を固定し、右手で芽の根元を持ち横に折るように芽を取ります。太い芽であれば剪定ばさみなども使ってもいいでしょう。

 中には同じ箇所から芽が2つ出ている場合もありますよ。

   

                      (写真:ちょっとアイスブレイク)

 

 

‐遠藤さんがカミキリムシを発見しました!放っておいて大丈夫ですか?

(酒井さん)カミキリムシは楮の葉をかじるだけでなく原料となる楮の枝も被害を受けます。放ってておかずに駆除しましょう。

    

(写真:しっかり駆除します。カミキリムシさんごめんなさい😢)

 

 

‐夏場になると3メートルを超える高さに成長するようですが、その頃の芽かきはどのように行うのですか。

(酒井さん)背の高さを超えると手が届かなくなるので、鍵を付けた棒でひっかけて楮を手繰り寄せて芽かきをします。虫を取る網を改良してひっかけやすいよう自分で作ってみました。

(写真:成長した楮の芽かきではこれが重要な役割を担います)

 

 

‐酒井さん本日はありがとうございました。酒井さんで刈り取られた楮はどこに出荷されているのですか?

(酒井さん)ここから車で20分くらいのところにある西田和紙工房に毎年出荷しています。工房の代表である西田誠吉(せいぎ)さんは、14年前にはじめてこの畑に楮を植えてくれてからの付き合いがあるので是非行ってみるといいよ。

 

 

 

西田和紙工房を訪問

 酒井さんの畑のある三隅町井野から車で20分、三隅町古市場に西田和紙工房はあります。西田和紙工房は明治以前から創業しており、現在西田誠吉さんが7代目を継承しています。

  

(写真:あたたかく迎え入れてくれた西田誠吉さん)

 

 

‐酒井さんからのご紹介がありお伺いさせていただきました。西田さんの工房では年間どのくらいの楮を使っているのですか?

(西田さん)この工房では全体で約7トンの楮を使って和紙製品を作っています。酒井さんからは約34トンくらい仕入れていますね。残りは自分で工房近くの畑で栽培したり、県外からも仕入れています。

  

 

 

‐市内には現在いくつの工房があるのですか?

(西田さん)ここも含めて浜田市には現在わずか4戸しかありません。自分が小さいころは周りの家々でも和紙を作っていましたが…やはり、後継者問題というのがあるのでしょう。あとは需要が減ってきていることも要因の一つだと思います。

   

(写真:和紙を漉く様子も見学させていただきました)

 

(写真:天日干しにより乾燥された和紙)

 

(西田さん)先ほど需要が少なくなったという話をしましたが、ここでは若手の職人からの意見も取り入れて新たな製品開発も行ってきました。例えば石見神楽の大蛇(オロチ)の演目で使われる蛇胴や民芸品などもこの工房で作っています。

  

(写真:和紙のほか、民芸品などもここで生産されています)

 

 伝統文化を守りつつ、現代のニーズに合わせて日々努力されているのですね。西田和紙工房の皆様、本日はありがとうございました。

 

 

 

浜田市立三隅小学校の楮の授業に参加しました

 日が変わって6月21日、浜田市立三隅小学校で行われた楮授業にも参加してきました。三隅小学校では毎年6年生の児童たちが小学校の畑で楮を栽培しています。この日は酒井さんを講師に招き、楮の育て方を教えていただきました。

  

(写真:熱心に聞き入る三隅小学校の児童たち)

 

 

‐芽かきの方法を教わった後は畑に行って実践ですね。楽しそうに作業されている姿が印象的でした。

(酒井さん)芽かきも大事なのですが、芽かきの前に草抜きも忘れてはいけません。栄養分が雑草にとられないように楮の根本周辺をしっかり草抜きしてください。

  

 

(酒井さん)草抜きが終わるといよいよ芽かきです。最初は戸惑いながら芽かきをしていた児童も、後半は余裕が出たのか楽しみながら作業していました。

 

   

 

  

 

 

‐ここで育てた楮はどうなるのですか?

(酒井さん)児童たちで育てた楮は冬に紙すきをして卒業証書に仕上げます。

「楮を育てて、楮を刈り取り、和紙を漉いて、卒業証書する」他の地域にはない素敵な取り組みですね。

(写真:酒井さんとの記念写真📷 次回楮の刈り取り時期にもおじゃまします♪)

 

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