黒沢まちづくり委員会

地元の食材を使ったお弁当で地域を助ける

2022.05.23

黒沢まちづくり委員会では、地域住民の健康づくりを目的に「ちい助弁当」の製造販売と、一人暮らしの高齢者の見守りを兼ねて自宅まで配達を行う「福祉弁当」の取組を始めた。お弁当作りは、まちづくりセンター内に設置された調理室(「ちい助」)で地域住民が交代で行っている。三隅町黒沢地区の人口は240人余り、高齢化率は57%を超え、将来の住民の生活水準の確保や共同体としての維持が危ぶまれている。そんな限界集落で始まった新しい取組とは?-食を通じたまちづくりを実践している住民の皆さんにお話を伺った。

 


 

食を通じて地域を助ける。

―黒沢まちづくり委員会では、住民の大半が高齢者という地区において「健康と交流に直結する食の拠点を作ろう」という思いから、センター内にある調理室を飲食店として営業許可を取得。地域を助けるという意味を込めて「ちい助」と名付けた。毎週水曜日に作る「福祉弁当」は、主に一人暮らしの高齢者を対象に自宅まで配達をするもので、健康保持のために栄養バランスや味付けを考慮したお弁当だ。昨年10月からは、毎週火曜日に住民誰もが頼むことができる「ちい助弁当」の販売も開始した。こだわりは「地元でとれた黒沢米と野菜を使い、すべて手作りでやっているところ」だという。調理室を覗くと、手際よく楽しそうにお弁当作りをしている住民の姿があった。

 

 

住民のやりがい作りにも一役買っています。

―実際にちい助の取組に携わる住民にお話を伺ってみると、「美味しいと言って食べてもらえることが嬉しい」という声が多く聞かれた。ある住民は、「自分に声がかかった時には正直面倒かなと感じたけれども、皆で集まればなんだかんだ言って楽しくやらせてもらっている」という。ちい助弁当と福祉弁当とでは担当が分かれており、献立を作る人、配達をする人などそれぞれに役割が与えられていることが、住民のモチベーションに繋がっている。栄養満点のお弁当メニューを考えているのは、長年食生活改善推進員として活動を続けてきた住民だ。「高齢者に食べてもらうお弁当は、ごはんの量や野菜の切り方、大きさまで配慮して作っている」という。周りのメンバーたちも「家庭の食事でも気を付けよう」と意識が変わったらしい。

 

 

着実に広がってきた取組。一方で配達する人が足りないという課題も。

―約1年前に15食の福祉弁当から始まった取組。今では多くの住民から注文をもらえるようになり、取材に入った火曜日(「ちい助弁当」の日)には21食分の注文があった。一見すると順風満帆のようだが、若いメンバーがおらず継続性が不透明なことに加え「福祉弁当を頼む独居老人の人も施設に入居していくなど、事業としては伸びしろがない」という不安もある。喫緊の課題としては配達員の確保。お金を握りしめて配達を楽しみに待っている高齢者もおり、安否確認を兼ねていることから、これまでは地元住民が担うべきだと考えてきた。「今後、人手不足を解消するには、身分証を付けてもらうなどの工夫をしながら、地区外のボランティアの人にもお願いができるようになると良い」という。

 

 

「ちい助」の取組を通じて、住民が元気な時間を少しでも長く。

―これからの目標を住民に聞いた。自身も後期高齢者だという住民は「続く限りはお手伝いしたい」と意気込む。お弁当作りには80歳を超えるおばちゃんも参加しているという。「将来のことはわからないが、現実を見つめていかないとやれん(いけない)」という言葉からは、できることから皆で協力して取り組んでいくという住民たちの覚悟を感じた。お店がなく買い物が不便な黒沢地区において、高齢者の健康的な食生活を支えることを目的に始まった取組は、どうやら「ちい助」に携わる住民の生きがいや健康づくりにも繋がっている。

 

※本記事は、「ちい助に携わる方との交流会(2022.5.17開催)」での発言内容を抜粋し、三人称形式で編集しています。

 

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